中国渡航記

子猫が三匹

子猫が三匹

 私はマンションの二階に住んでいるが、二階なのでエレベーターには乗らず階段を使うことも多い。

 エレベーターのある通路から扉を出たところに外に開放された踊場があり階段室の扉を開けると一階に行け、そこの扉を開けると一階のホールに出るられるようになっている。

子猫が三匹



ドアの汚れたガラス越しに撮っているので写真がクリアでないが、ご勘弁を。

 

 

 ある日、その踊り場に子猫が三匹いた。捨て猫か。私は猫好きではないが、この子猫はとても小さくて可愛いので、子猫を驚かせないように、避けてエレベーターを使うことにした。だがその翌朝出かけるときに近寄って見たいという気持ちも手伝い階段を使おうとしたら、二匹が階段室の中に入り上の方に逃げてしまった。一匹だけになると可哀想なのでこれも階段に追い立て誰かが来て連れて行くか外に出してくれることを期待したのだが、夜帰ったら一匹だけが踊り場にいた。

 バラバラになってしまったので階段室の扉を開放で固定しておいたらその翌朝はまた三匹一緒になっていた。

 その夜もまだおり、食べるものも飲むものもなくて死んでしまっては可哀想なので牛乳に食パンを一枚分ちぎってプラスチック容器に入れ、踊り場に置いてきた。

 私はいくら可愛くても猫を飼うことは毛頭考えていないし、ペットを部屋の中で飼うことは契約で禁じられてもいるので、誰かが引き取ってほしいのだが。マンションの管理事務所に行って相談してみるか。でも下手に相談して殺処分されたら可哀想だ。会社で相談したら動物保護局のようなところに連絡したらなどと言われたけれどそれもなんだか面倒である。

 そしてその翌朝、見に行ったら牛乳とパンはきれいになくなっていた。やはりお腹が空いていたに違いない。そして子猫三匹はまだいる。

 今度は私には濃厚で甘すぎたマンゴジュースを出してみた。

 さらにその翌朝、マンゴージュースは口に合わないらしくあまり飲んでいなかったのだが、母猫がいた。三匹でお乳を飲んでいる。

乳をやる母猫

 捨て猫ではなかったのだ。野良猫がここで子供を産んだのかもしれない。
 そしてマンゴジュースのプラ容器はひっくり返されて周りが橙色にべとべとに汚れていたので、水洗いして雑巾で拭いてきれいに後始末した。

 掃除に行くと母猫は前脚をあげて、シャーッと威嚇してくる。せっかく君たちのことを心配して面倒見てあげてるのにね。(お節介なだけだったかもしれないけど。)

 そのあと、三匹がそろっていることを確認したうえで、エレベータで下に降り、一階から階段を上がり、子猫に気づかれないように階段室のドアをそっと閉めて、また階段を下りて一階からエレベータで上がって戻って来た。

 猫好きでない私でも、子猫は可愛いのでときどき様子をみに行くが、まだ子猫のジャンプ力では踊り場の壁を越えられない。この壁を越えられないということは外から入って来たわけでもないわけで、するとこの母猫がここで子猫を産んだことになる。ふだん私が出入りしていたところでお産をするというのもなかなかすごいことである。

 もう少し成長したら母子四匹でどこかに出て行くことだろう。
 その日までは静かに見守ってやることにしよう。

と思っていたら出張から帰って来ると、猫たちは居なくなっており、こんな貼り紙が。

 野良猫が来ないようにするため、踊り場の手すりに薬を撒きました。
 ここで子供を遊ばせないでください。

 追い払われてしまった。。

 その後、大家さんに設備の修理のために来てもらったときにこの話をすると、猫に居つかれたら、フンはするし臭くて不潔になるから相手にしちゃだめよ、と。ま、それが道理というものだろう。一時の借り家住まいという気楽さから餌をやってしまったのは、マンション住民として褒められたことではなかったことかもしれない。

 とは言え、今回のことで初めて子猫を拾って来てしまう人の気持ちが少しわかった。束の間だったが温かい気持ちにさせてくれた猫たちに感謝!

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(2015/10/20)