福井県年縞博物館
福井の御朱印集めの旅では、永平寺、氣比神宮、大湊神社を廻ったが、氣比神宮よりも西方で三方五湖の畔にある福井県年縞博物館を訪れた。
三方五胡のひとつ水月湖の湖底には、春夏秋冬ごとに種類の異なる土砂や植物が堆積し、それが層をなしている。これを1回に1mずつ少しずつ深さを深くしてボーリングをし、湖底から45mの深さまでボーリングして取り出した泥の層を縦にスライスすると1年毎に厚さ約0.6~0.7mmの縞模様が観察できる。これが年縞(ねんこう)と名付けられ、約7万年分の縞がこの博物館に保管・展示されている。
以下の写真は縦には並べられないので横に並べて展示している様子。試料採取時に7万年のうちの1年の欠けもないように、欠けがあったところは並行してボーリングし、欠けを補っている。展示が上下に3列あるのはそのためだ。
年縞からは、いろんなことがわかり、火山灰から火山の噴火のあったことや、植物の花粉の化石からその時代の植生がどのようなものであったのか、気候は温暖であったのか冷涼であったのかなどがわかる。実際に氷河期があったことも、いまより暖かい時期があったこともわかっている。
さらに現代の方位磁石はN極が北を向くが、水月湖の年縞に含まれる微細な磁鉄鉱の粒子の向きから地球の磁場の向きが変化する地磁気エクスカーションという現象が起きた痕跡が見つかりつつある。
そしてこれが水月湖の年縞の最も意義のあることだが、水月湖の年縞は、世界の歴史、考古学の年代決定の世界標準の「ものさし」に採用されている。縞に挟まっている植物の葉の化石や花粉の放射性炭素(C14)の値(崩壊せずに残っているC14の量)を調べることで正確な年代がわかるようになったのだ。
鹿児島県の錦江湾の北の噴火によって生じた姶良カルデラの噴火年代は「3万0078年±48年前」と水月湖の年縞に堆積した火山灰からその正確な年代が明らかになっている。
この博物館での滞在時間は1時間弱だったが、丸一日かけてゆっくり見たいところだった。学芸員の方も親切に説明しておられ、私たちも少し説明していただいたが、時間があればつきっきりで案内をお願いしたいような興味深い展示だった。全部の展示を丁寧に見ることは全然できなかったので、その代わりに解説書を購入して帰宅後にじっくり読ませていただき、機会があればもう一度行きたいという思いを強くした。なお、本ブログ中の年縞に関する説明は、この解説書の内容を一部使わせていただいた。
福井県年縞博物館のWEBサイトのURLを示す。https://varve-museum.pref.fukui.lg.jp/
下の写真は、三方五胡レインボーラインの山頂公園から撮ったものだが、年縞博物館は矢印で示した辺りにある。
以上
(2024/11/19)