中国渡航記

レンタル自転車サービス

レンタル自転車サービス

 上海の街では最近自転車に乗る人が増えている。北京の天安門広場の前を大勢の人が黒い自転車で通勤する、というのはその昔のイメージで、上海、蘇州などの多くの年で電動バイクが最近のポピュラーな乗り物だった。電動バイクは日本の50cc原付バイクのような大きさで、動力はバッテリーで動くモーターである。なので街角のいたるところで店の中から延長コードを引っ張って来て電動バイクに充電しているところを見かける。充電器も延長コードも屋外用とは思えないので、雨が降ったらすぐ片づけてね、といつも心配な風景ではある。

電動バイク充電風景

 ところがここに来て、オレンジや黄色や水色のカラフルな自転車が雨後の竹の子のように増殖している。見るとすべてQRコード(二次元バーコード)が取り付けられており、1回1元とか1回0.1元とか記されている(1元は17円弱)。

mobike車体 mobikeのQRコード mobike

小鳴単車車体 小鳴単車のQRコード 小鳴単車

ofoの車体 ofoのQRコード ofo

 少し前は、歩道上に自転車を固定して施錠できる設備を設けた市区が運営するレンタル自転車があったが、最近流行のサービスは、決まった置き場所に置かれておらず、ロックはタイヤを固定するロックのみで、返却場所は公共の場所であればどこに置いてもよい、つまりどこでも乗り捨て自由なサービスである。

サービスの利用方法

 先発サービスである銀色の車体にオレンジ色のロゴのmobike(摩拝単車)を例に取って説明する。(参考 http://www.mobike.com/global/

 路上に停めてあるのが見つかればそのまま使える。あるいは、スマホで自分の周囲のどこに停めてあるのかを調べて予約することができる。下の画面は私が試しに調べてみたものだ。なおmobikeサービスは利用するためにデポジットとして299元を支払う必要がある。デポジットはサービスによって異なり黄色い車体のofoのサービスでは99元だ。

mobike空車の位置表示

 予約した自転車が見つかったら、スマホで自転車に取り付けられているQRコードを読み取る。すると自転車のロックが自動的に解除される。

 利用し終わったら、公共の場所(自転車が置かれるような路上など)に置き、ロックをかけるとそこで自動的に課金される。1時間あたり1元である。

 下の画面は水色の車体の小鳴単車のホームページ(http://www.yueqiquan.cn/#features)から引用した紹介の画面。
 左から、ユーザ情報、空車情報、移動ルート記録、課金情報。

小鳴単車の紹介画面

 因みに私は自転車の利便性(あまり体力を使わずに早く移動できる)よりはウォーキングによる健康維持(一生懸命歩いて体重を減らす)が必要なためこのサービスは利用していない。

サービスの仕組み

 ネット情報によると、自転車にGPSによる定位機能を持ち、携帯電話回線を通じてネットに接続し位置情報の提供、開錠、施錠、課金のコントロールを行うようである。ということは自転車には電源を持っている必要がある。

 mobikeは太陽電池パネルを前部に持っているようだ。ヘッドライトではないかと思ったが、同僚の話では中国の自転車は日本のように夜ライトをつけたりしないということで、よく見るとただの白い反射板を取り付けている自転車が多いなかでmobikeはコードが出ており、確かに太陽電池パネルのようである。mobikeの軽量タイプのmobike liteもofoも小鳴単車も太陽電池パネルは見当たらないので、車軸内蔵型のダイナモ(発電機)を使って発電し自転車に搭載した電池に充電しているのではないかと考えたが、それらしい車軸の大きさではない。うーーんSEIKOの腕時計のように振動で発電するようなデバイスを内蔵しているのか??

mobikeの太陽電池パネル

 同僚の話によるとofoのサービスでは、スマホの画面上でmobikeのように詳細にどこに自転車があるかわからなかったが、それも最初のうちだけで、いまは画面で予約はできず、現物を見つけて使うしかないとのことだった。

 この場合には、GPS定位機能を内蔵しておらず、携帯電話による大まかな定位だけを行っていることが考えられるが、大まかな表示ではよくわからないとクレームがあったか、あるいはこれだけたくさんあれば画面表示など必要ないということになったのかもしれない。

 ofoはダイヤルで4桁の数字を合わせるタイプのロックを使っており、この場合はQRコードを読み取ると車体番号がスマホからサービス事業者側に伝えられ、事業者からスマホへ開錠用の番号が伝えられ、手動でロック解除する。使い終わった後ロックしたら、そのことをスマホを使って利用者が手動で申告するとのこと。ロックの状態は恐らく車体から携帯電話回線を使ってシステム側に通知されるのだろう。

ofoのダイヤル式ロック

 利用者が放置したときの利用者のスマホの位置情報を利用して位置を表示することにより、携帯電話機能も持たずによりもっと安価なシステムを構築することができるかもしれない、などとこういうシステムを考えるのもなかなか楽しいものである。

サービスのメリット・デメリット

 これまでも健康志向の人は自転車に乗っていたが、いい自転車に乗っていると盗られるということがあったようだ(日本でもあると思うが)。この問題に関し、GPS定位機能がある場合、どこにあるかは運営会社からは不正に私有地に置かれていることが一目瞭然でわかり、、またそういう場合に見つけた人が知らせるようになっていて、これが持ち去りの抑止力になっているようだ。

 公道の歩道上などに置くのがルールで、小区(塀に囲まれた団地)内に持ち込むのは禁止らしいが、小区内に置かれた自転車を発見して通知するとその人の持ち点というかチャージしている金額が増え、逆に通知された自転車をその場所まで乗ってきた人はチャージ額が減額されるなど、なかなか優れた仕組みである。
 
 話が長くなったが、盗られるのがいやで自転車に乗れなかった人が自転車を気軽に利用できるようになったのは大きなメリットと言えよう。

 一方で、これまでは地下鉄の駅を出たところなどに、250ccくらいのバイクのおじさんが待っていて、後に人を乗せて運ぶという仕事があるが、こういう人たちの仕事が奪われるという問題がある。先日、川にレンタル自転車が投げ捨てられたということだが、そう聞くと私も路上に破壊された自転車が放置されているのを目撃したことがあり、恨みを持っている人がいる可能性はある。

 また、日本でこのようなサービスができるかというと、駅前自転車放置は再三再四取り上げられる問題なので難しいだろう。中国はやはり土地が広く、歩道の幅も広いので今のところこのような問題が次々に置かれても問題ないようである。

橋のたもとの自転車

 川にかかる橋のたもとの階段の下には、多くのレンタル自転車が。ここで乗り捨てて川の向こうへ歩いて渡ったものと思うが、翌日は反対方向に利用されるのだろうか。人通りが多いところではそれなりにバランスが取れそうだが、そうでもないところではどんどん溜まってくるというようなことがないのか少し心配ではある。

サービスのまとめ

 一覧表で比較する。(2017/3/11現在)

項目\サービス mobike mobike lite 小鳴単車 ofo
デポジット 299元 299元 199元 99元
利用料 1元/30分 0.5元/30分 0.1元/30分 1元/60分
位置情報 詳細 詳細 詳細 概略だったが今は見れず
駆動方法 シャフトトライブ チェーン ゴムベルト チェーン
タイヤ 空気なし 空気なし 空気なし 空気入り
システム電源 太陽電池 不明 不明 不明

 自転車自体もmobikeや小鳴単車はこだわりがあることがわかる。シャフトドライブや空気なしタイヤはチェーンが外れたりしないよう、パンクや空気抜けがないよう保守性を考えてのことと思うが、ofoは空気抜けタイヤの自転車や壊れた自転車を発見したときはユーザーが通報するようにしているとのこと。通報した場合にはそれなりのインセンティブがあるのだろう。ただし実際に通報して係りの人がくるまでは1週間とかかなりの時間がかかるようである。

レンタル電動アシスト自転車サービス

 2週間ほど前には、電動アシスト自転車もレンタル自転車サービスに参した。配られたチラシを読むと、上海に6000箇所の充電ステーションを設けるのでそこに返すように、とある。どこに返してもよいレンタル自転車サービスに慣れた上海っ子にこのルールは受け入れられるだろうか。

(2017/3/11)

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