中国渡航記

上海ガイドその3

上海ガイドその3

 年末年始に娘と娘の彼と妻(2回目)が来た。来る人が違うだけなので大体行くところは同じである。よって今回は、中国初体験の娘の彼から印象的だったと言われたことや新しい発見を紹介する。

 

1日目

老正興菜館

 上海浦東空港に中国国際航空CA930便で17:50到着のため、1日目は夕食からスタート。

 ここは伝統的な上海料理が食べられる店ということで選んだ。会社の人の送別会で実績があったこともある。南京路歩行街から二筋下の福州路にある。

 到着時刻は夜8時半過ぎ。早速注文しようとするが、ここは9時までだが、よいかと聞かれる。あと25分しかないじゃないか。25分で追い出されるのでは、ここはやめて出ようかと一瞬考えたが、料理人も私たちも9時で帰るのでそれまでに注文し終われば食べるのは食べていてもかまわない、という。

 それならということで注文をする。まず娘たちが食べたがっていた上海蟹を注文。当地では日本で勉強する中国語の教科書に出てくる上海螃蟹(シャンハイパンシエ)と言っても通じず大甲蟹(ダージャーシエ)と言う。(ジャーは、門構えに甲と書かれているが入力できないので甲で代用。)

 あっさり、なくなりましたと言われる。そうか来たのが遅かったか。これは明日以降に持ち越すとして、気持ちを取り直し、4人分としては多めの注文をしたつもりだったが、注文取りの人が急かす感じだったので、何点か注文漏れがあり、結果的に適量に。料理は次々に運ばれてき、料理そのものは美味しく、私が一番気にいったのは豚肉とその煮凝りをプルンと固めてあるものだが、ふつうは無色透明の煮凝りなのがここでは茶色透明で醤油味のもので、なんとなく懐かしい味であった。醤油っぽい卵焼きといった家庭の味の感じ。

 さて、9時前になると、それ以降は飲み物も注文できないというので最後にビールを3本ほど頼み、会計を済ませる。周りのお客も次々に帰って行き、我々だけになると、周囲の天井灯は切られ、薄暗いになかに我々のテーブルだけが明るく浮かび上がるということになった。これが娘の彼が一番印象的だった光景である。

老正興菜館

 薄暗くなったテーブルで待機する従業員の人たち数名を横目で見ながら10時頃までに食べ終わった。この後、外灘の夜景見物に行ったが時間がやや遅く東方明珠(テレビ塔)のライトアップはもう終了していた。残念!

2日目

豫園、外灘

 豫園は、以前に私も妻も行ったことがあり、息子夫婦は私の出勤日に自力で行ったことによりこれまで案内していなかったが、今回は上海観光の基本としてガイド対象に加えた。

 豫園までぶらぶら歩く道すがら、空間デザインやショップのデザインなども行っている娘は、街角のようすや近代的な建物、中国的な建物、店舗などに次々とシャッターを切っていた。

廉価なマフラーを品定め  豫園近くの商店街

千と千尋の世界のような  豫園近くの中国風建築物

豫園前庭  豫園入り口の前庭にて

猫歩きシリーズ1  豫園の入り口近くにいた猫

豫園前庭  豫園を出た後、再度前庭にて

 豫園から、妻お気に入りの外灘のANNABEL LEE(シルク小物などのショップ)への移動は歩いても30分くらいだが時間の節約のためタクシーを拾いたいと思って大通りに出るとちょうど客待ちのタクシーが。すぐに乗り込み外灘の福州路入口までというと30元とのこと。通常10元か15元で行くところだが、年末年始の繁忙期だし、時は金なり、仕方ない、30元でOKする。

 中国赴任後メータ付きのタクシーでメーターなしの料金をふっかけられたのは実は初めてである。これが娘の彼の2番目に印象に残ったことであるが、私が1年8ヶ月いて初めて遭遇したことが印象に残ってしまったのは中国のタクシー業界にとっては遺憾なことであったろう。

猫歩きシリーズ2  ANNABEL LEEの玄関階段にも猫

雲南路美食街

 ここでは妻だけが買物をし、昼時となったので雲南路美食街へタクシーで向かう。辛いものを食べたいという娘たちの要望だったので、辛いものを探すが、各地の料理があると言われる雲南路美食街でも案外辛いものは少ない。深センでは7割方は辛いもの店というイメージだったのだが。上海では少数派のようだ。ようやく見つけたのは辣府という店。火鍋店のようだ。なお後でわかったがこの店は行列ができる有名店とのことで、15分程度の待ちで席につけたのはラッキーだったと思われる。

 実はその晩は私の自宅で皆で火鍋を食べようと計画していたのだが、幸い材料は帰りにスーパーで買うことにしていたので計画変更し、昼は辛い火鍋、夜は家で上海蟹を食べることにする。

   これは何だ?  これが正解

 黒い箸と袋に入った白木の一対の棒がある。この白木の棒は何だ?箸置きかなどといいながら、しばらく意味がわからず黒い箸で食べていたがやや短いし先が太くて食べにくい。そうか、この白木の棒は黒い箸の先につけるアダプターなのだ。黒い箸の先にはめ込むと火鍋をつつくのにちょうど良い長さの箸になった。
 
 真っ赤なスープに何度もつけていると箸先の赤い汚れが洗ってもとれなくなるのでこのような使い捨て先端部脱着方式の箸が考案されたのに違いない。

いかにも辛そうな火鍋

 赤いスープと白いスープが半々のタイプを注文したが、注文の際に辛さ度を聞かれるので、微辛というもっとも辛くないものを注文。深セン時代に微辛でも日本人には十分辛いことを知っていたからだ。

 タレは、タレ置き場に行って好きなタレを取ってくるのだが、娘たちは怖いもの知らずでタレまで真っ赤ないかにも辛そうなのを取ってきた。私はスープが辛いのでタレは甘めの胡麻ダレ系を選択。

 その結果、娘の彼は日本では辛いものには強いと自負していたとのことだが、もうこれからは辛いものに強いというのはやめます、と言っていた。そういう謙虚な姿勢はなかなかである。

自宅で年越しパーティー

 このあと、地下鉄で新天地、タクシーで田子坊へ行き、地下鉄で娄山関路まで来てだいぶ疲れたのでお茶にすることに。APITAの地下のケーキ屋でケーキを買ってその場でコーヒーか紅茶を注文しようとしたが、ケーキの種類をようやく決めたのに飲み物は今はやってない、明日からだとのこと。お茶なしでどうやってケーキを食べるんだ?と思いながらケーキの注文をキャンセルし、別の店でケーキと紅茶で休憩。

 このあとAPITAで上海蟹を買う予定だったが、つい先日まであったのに撤去されており、洋風の黒胡椒ローストチキンと野菜若干を買い、歩いて自宅へ向かう。途中のデパートの地下で生煎(ションジェン=焼きシャオロンバオのようなもの)、地元商店街で上海蟹のオス(この季節はオスの方が美味しいというので)を4匹買った。

 さてこれが年越しメニュー。左上の方から右下に向かって、野菜サラダ、生煎(海老入り4ケ、豚肉入り4ケ)、上海蟹4匹、黒豆、栗きんとん、ローストチキン、武漢燻製魚、金色の皿(伊達巻、紅白かまぼこ、牛蒡のなんとか)、緑の皿(ぶどう、瓜)。和風のものは妻が日本から持って来たもの。武漢燻製魚と果物は友達からのいただきもの。今回手作りのものは何もないけれどお蔭で立派なメニューになった。

年越しメニュー

皆で乾杯

 インターネットTVで紅白を見ながら食べていたのだが、アクセスが多いのか途中で画像が固まってしまった。それをきっかけに私と娘の彼が交互にギターを弾いて皆で一緒に歌を歌ったりしながら楽しく過ごした。ギターは、単身赴任とはいえ、楽器のない生活はうるおいがないと感じて自分へのクリスマスプレゼントとして買ったものである。

3日目

福一零三九

 娘たちとは別行動ながら、両グループとも上海博物館を訪れた。その後南京路で買物をしたことも同じだが、私と妻は日本の旅行ガイドブックに載っていた洋館の中にある上海料理店という触れ込みの福一零三九というやや高級なレストランに行った。地下鉄2号線江蘇路駅より徒歩3分ほどの愚園路から10mほど中に入ったところにあり、上海仙錦福園餐飲管理有限公司というところが経営していて愚園路1039番地にあるので福1039という名前なのだ。

 ここではピアノの生演奏があり、綺麗なドレスをきた女性ではなく音楽大学の男性教授がアルバイトで弾いていると言う感じだった。聞くともなく聞いているとそんなに流暢ではないがつっかえたり弾き直したりすることなく弾いている。

ピアノ生演奏

 しかしショパンのワルツOp.69-2を弾き始めると、これは私が十数年前にピアノに夢中だった頃に発表会でも弾いたことがある曲だったので、つっかえてはいないものの、長調に転調するところが短調のままで、和音が間違っていたりするところが明確にわかってしまった。そう思うと弾き方もやや自身なさげで、演奏者のスマホに電話がかかってきたのを潮時として弾くのをやめてしまった。うーーん、残念。

4日目

空港へ見送り

 帰国便はCA929 9:55発。地下鉄2号線龍陽路リニア乗り換えで上海浦東空港まで送って行く。

 出国審査場に3人の姿が消えたのを見届け、新アクセス方式を試すため空港バスで市内まで帰って来た。静安寺バスターミナル行きというのはどこに着くのかと思ったら、地下鉄2号線静安寺駅の上にある久光デパートのすぐ裏側で便利なところで、料金も22元と安く時間も40分と早くて快適だった。今後はこれを使おう。

静安寺

 静安寺も目の前にあるので、これまで入ったことはなく、せっかくの機会なので初詣をして行こうと50元を払って入場し、線香5元で焼香もした。

 仏像も数多くあり、正面のお堂にあったものは奈良の大仏級の大きさかと思ったが、あとで調べると奈良(東大寺)に大仏は高さ14.7mもあるとのことなので、その1/3程度だろうが、久しぶりに見たので立派に見えたのかもしれない。

静安寺

振り返り

 最後に彼の印象に残ったことを振り返ると、

  • 客である私たちをまたず片付けを始めたレストラン
  • 「観光料金」と吹っかけてきたタクシー運転手
  • 信号をものともしないスクーター(これは本レポートには記載なし)

だったが彼によると、字面にするとネガティブだけれど、自分としてはとてもポジティブな感情で、自由(言葉を選ばずやりたい放題)で素敵だと思ったとのことである。

 空気を読み過ぎの窮屈な日本人に比べて、あっけらかんと自分の利益になるように生きている中国人に感動したということかもしれない。

 私の反省としては、このレポートを読むとこのレストランは客のことを考えていないように見えてしまうが、客層や従業員の勤務時間などを考え、9時オーダーストップでその後は仕舞いにかかる、というのは悪いことではないと思う。遅い時間に行くときは遅くまでやっているレストランを選ぶ必要があるということでやや準備不足であった。次回に生かそう。

(2016/1/11)

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