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床下浸水防止工事

床下浸水防止工事

1. 水害のリスク

 私の自宅は、近くで大河川の一級河川同士が合流する水害のリスクが高い場所にある。昨年(2019年)の台風19号通過後には氾濫ぎりぎりのところまで水位が上昇し、警戒レベル3(避難準備・高齢者等避難開始)が発令された。

 ハザードマップでは、以前5m(2階の軒先程度)とされていた浸水高が2年ほど前に最大10mと改定されたため、長時間の越水もしくは破堤が発生した場合には家屋の被害を免れないが、短時間の越水もしくは自宅から数十mのところにある小河川の氾濫程度には備えたいと常々考えていた。

 この小河川も30年ほど昔には一度溢れて自宅近くの道路まで水が来たことがあり、その後強力な排水能力を備えた排水機場が完成してからは溢れることはなくなったが、大河川の水位がぎりぎりまで上がった状況で雨が降り続いた場合に小河川から大河川へ排水が可能なのかは知らない。

 自宅は盛り土をした上に建てられているので概ね道路面から1m程度水が来ると床下浸水となる。そこで最低限、この程度の水害による床下浸水は防ぎたいと考えた。床下浸水が起こると畳を上げて泥だらけになった床下から泥をかき出し、拭き掃除をするという大変な作業をする映像がテレビで流されるがこれは避けたい。床下浸水は、床下換気口から水(泥水)が浸入することで発生する。そこで、床下換気口を浸水のリスクがある台風や大雨の前に塞ごうとする考えだ。

           

 自宅の床下換気口

2. 対策方法

 床下換気口で型を取ったシリコン樹脂のようなものをパコっと嵌め込めればいいと考えたが、そのようなものはいくらインターネット上を探しても売っていない。発泡スチロールの塊を削り出して嵌め込むというのは自分でできそうな解だがなかなか大変な作業となりそうだ。住宅リフォームメーカーに尋ねてもそのような情報は持っていなかった。

 探し続けて1年あまり、昨年秋にようやく発見した。その名も床下換気口止水シート。広島県呉市に本社がある株式会社ダイクレというグレーチングを主力商品とする会社が販売している。ただ、標準品は自宅の床下換気口とサイズが合わないので、サイズを合わせた特注品が製作可能が早速メールで連絡した。特注品も可能で、価格も標準品と同様との回答を頂いた。その後電話で話しをすると一昨年の西日本豪雨の際に水害が多発したため開発し2019年8月頃から販売している商品だそうだ。

 床下換気口止水シートの製品紹介サイトのURLを以下の紹介する。

http://daikure-shop.net/products.php?inquiryNo=SB068

 床下換気口はコンクリートの基礎に開けられた孔なので、その換気口の表面にステンレス製の枠を接着剤で貼り付ける。普段は枠だけなので換気口の役目を果たしているが、水害発生のリスクがあるときには樹脂製のマグネットシートをベロっと枠の上に貼り付けて孔を塞ぎ、床下への水の浸入を防止するというものだ。

 同社のホームページには簡単な実験で浸水を防止する動画が掲載されているが、どの程度の水圧や水流に耐えられるのかは不明だ。しかし少なくとも静かに水が床下程度の高さまで上がってくることに対しては効果があると考え、自宅の床下換気口の採寸を行い、簡単な図面を送付し見積りをもらって注文した。価格は1式(枠とマグネットシートのセット)税別で1.28万円などと安いものではない。9式注文したので税込みでは13万円弱。しかし泥にまみれることを防止できると考えれば必要な出費と考えた。

 以下に、採寸から工事完成までの作業をレポートするので参考にしてほしい。なお同社で施工はしてくれない。購入者自身でやるか、近くの工務店にでも頼んでやってもらってくださいとのことだった。私は自身でやることにした。

3. 採寸

 コンクリートの基礎に穿たれた孔の寸法は、ばらつきが大きい。おおざっぱに言えば自宅の床下換気口9か所は全て横45cm×高さ19.5cmくらいの大きさだが、全箇所測定すると数mmの誤差がある。

 腰を屈めて巻き尺で測定するので測定誤差もある。また、自宅の換気口は基礎に穿たれた孔の底面が内側から外側に向けて傾きがある。雨水の排水のためと思われるが、枠のところに水がたまらないよう寸法を考えないといけない。仮りでもらった図面をもとに寸法を調整してボール紙で型紙を作り、9か所すべての換気口に当てて水がたまるような問題がないことを確認してから発注した。

型紙を作って全9か所に当ててみる

4. 納品物

受枠表面写真(この形が8枚、異形が1枚あり)

 

受枠裏面写真

 

止水シート写真(この大きさが8枚、縦が少し短いものが1枚)

5. 工事に必要な副資材

必須品・・・価格(税込み)を示したものは、近くのホームセンターで調達。

・変性シリコーンシーラント(セメダイン株 POSシール ホワイト NET.333ml SM-451)ダイクレ社の推奨品だが相当品可どのこと。2枚に1本必要と言われて5本用意したが、2本半しか使用しなかった。¥578円/本 アマゾンで買うよりホームセンターの方がかなり安かった。

・コーキングガン(=シーリングガン。シーラントを押し出すための道具)¥208

・養生テープ¥168

・へら(シーラントをきれいにのばすもの。樹脂の端切れを切って自作)

・ガムテープ(手持ちの紙製。落ちないように日本製の方を使用)

あった方がよい品

・養生シート(地面や、花壇の土の上で横になっての作業が必要)

・ぼろ布(シリコンふき取り用)

・ヘルメット(出窓の下などに換気口がある場合、不用意に頭を上げると角にぶつけて痛い思いをする)

・手袋(軍手は作業しにくいので、生協で料理用として買った極薄アクリロニトリル手袋を使用)

・汚れてもいい服

6. 作業日

 一日では終わらないと予想し、好天が続く予報の日に実施した。商品は発注し代金を銀行振り込み後、約3週間で12月中旬に納品されたが、年内は天候不順で周期的に雨が降ったため、関東地方で西高東低の冬型気圧配置となり安定した晴天が続くようになってから実施。年明け1週間が晴天予報だったため、1月4日~6日で実施。シーラントがある程度固まらないと次の作業に入れないため待ちが必要で、初日は朝9時から夕方4時頃まで、あとの2日はそれぞれ午前中くらいの作業で終了。

7. 施工

 受枠表面に養生テープでマスキングしてから、裏面にシリコーンシーラントを金網に絡むように塗ってゆく。最初の設置場所は、S1,S2,S3,W1,W2,N1,N2,N3,E1と名付けた9か所の換気口のうちのS2。

 この写真のS2用受枠は9か所中1か所だけの異形のものだ。地面にレンガが敷き詰められており換気口の下側からレンガ敷き面までの距離が短いため縦の長さを短くする必要があり、かつ水抜きの切込みが左右に入れられている。写真では上下逆になっている。

 受枠を接着したところ。厚さが1.5mmのステンレス枠にステンレスの金網を取り付けたもので自重が0.8Kgあり、ずり落ちてくる。小石をかましてずり落ちないようにした。手前側に倒れてくることはない。左右にも養生テープを貼り左辺、右辺と上辺にもシーラントを外側から塗布した。こういうシーラントを使う作業は初めてで、とても不細工である。養生シートも壁ぎりぎりまで寄せるべきであった。当初人間が汚れないために敷いていたが、シリコーンシーラントで他の物を汚さないのが本来の目的だということにいまさらのように気付いた。

 次に設置場所S1。ここからあとは、全て切り欠きのない同形同寸のもの。

 コンクリート基礎側のマスキングは接着する前にするべきだった。下がはみ出して汚い。受枠がずり落ちないようにガムテープで固定。このあと左右下をマスキングしてシーリング。汚い仕上がりだが、ここは木製の縁台で隠れるので気にしない。

 S3は、出窓の下の花壇の奥で養生シートを拡げてその上に半分寝そべって作業。不用意に頭を上げるとヘルメットがゴツンと出窓の下の角にあたる。ヘルメットがなかったら頭が傷だらけだ。

 W1は、コンクリート基礎の左右下をマスキングしてからやる。接着してもじわじわとずり落ちてくるので、ガムテープを壁に貼って、受枠の下辺を押し上げながら早業でガムテープを受枠に接着するのが大変で、かつ押し上げるときにシリコーンシーラントがたくさん手につき、それが余計なところについて汚くなる。

 実は最初にやったS2もそうだのだが、受枠の左辺、右辺、下辺はコンクリートの基礎の表面に接着するのに対して、上辺にはコンクリート基礎がない。基礎に長方形の孔が空けられているのではなく、凹形になっているのだ。よって、受枠上辺の裏側にシーラントを塗っても意味がなく、S2の写真は誤塗布なのだ。上辺は左右下辺を接着後に受枠と天井(外壁の下面のこと)とのすき間を表面からシーラントで塞ぐように厚塗りする。これはメーカーさん相談し、当初天井にあたるところは受枠をL字形に曲げ加工して面で接着できるようにすることも検討したが、結果的にこの工法に落ち着いた。

 下写真で上辺だけマスキングしていないのはここにシーラントを塗るためだ。また金網部分にもシーラントがついて汚くなるので、5枚目のW2から、納品時に受枠がくるまれてきた青色の粘着性のシートを表面の金網部分だけ残すことによってフルマスキングとなるように改善したものだ。

 ここからは、コンクリート基礎上のマスキングも接着前に貼るように改善。採寸時に使用した型枠をあてて貼った。最初からそうすればよかった。

 このように上辺にはシーラントを塗らないのが正しい。

 暗くなって来たので1日目はここで終了。W1、W2の2枚はガムテープを上方から貼る方法にしたので、受枠上辺のシーリングはガムテープを剥がせるくらいに固まるであろう翌日に行う。

 2日目は効率的に作業を進めるため大量生産方式に変更。残り4枚(N1,N2,N3,E1)は、表面のマスキングを室内で予め行った。その後の作業は基礎側のマスキングを4か所とも型紙を使って予め行い、接着作業だけを順にまとめて行えるようにした。

 また、前日やり残したW1,W2の上辺シーリングも実施。ガムテープを剥がしてもずり落ちることはなくしっかり固定されていた。昼過ぎには作業終了。

 3日目は、前日実施の4枚の上辺シーリング。一番困難だったのはN1の換気口の前にガス給湯器の室外機が設置されており、上辺シーリングをするのに手が入らなかったことだ。なんとかコーキングガンの先を無理やり差し入れてやったが、この作業でダウンジャケットの袖にべっとりシーラントがつき、ほとんどこのダウンは捨てようかと思った。この日も昼過ぎに作業終了。

 あとはシーリングがしっかり乾いたら、シーリングのバリを切り取るなど仕上げを行うのだが、1月7日はまだそこまで乾かず待ち。1月8日は雨。1月9日は朝から晴天となったため、はみ出たシーラントを切り取ったりふき取ったりしたあと、止水シートが貼り付けられるか確認を行った。

8. 完成

 床下換気口N2の受枠完成状態。

 止水シートを貼り付けるところ。

 マグネット式の止水シートを貼り付けた状態。大雨が降る前にこの状態にする。止水シートは表裏どちら向きでも貼りつくが、巻き癖がついているため巻き癖の内側を受枠に吸着させる。逆向きだとシートの端部が反り返っているので、横からの水流に対して止水シートが剥がれるかもしれない。

 

 以下に床下換気口9か所への受枠設置状況を示す。左写真が遠景、右写真が近景。

S1 縁台の礎石が前に置かれている。

 

 縁台を設置するとこうなる。手が入りにくいので止水シートをずれないように貼るのが難しい。

S2 リビングの出入り口でレンガ敷きのため高さが短く、左右に水抜き用の切込みをつけた異形の受枠。

 

 水抜き用切込み部拡大。

S3 出窓の下の花壇の奥で作業性が悪かった。

W1 出窓の下。

W2

N1 ガス給湯器室外機が邪魔。

N2

N3

E1 出窓下。建物本体外壁のコンクリート基礎上からのオーバーハングがほとんどないためシーラントを外壁にはみ出すように厚塗りする。

シーラント厚塗り拡大。

 

9. 作業を終えて

 ヘルメットの細かい傷は全て今回の作業でついたもの。数えきれないほど頭をぶつけている。ヘルメットでなくても厚手の帽子は必須だ。

 初日に2枚をやったところで、あまりにも仕上がりが不細工でいやになり、投げ出したくなった。つらい姿勢で作業するので腰も痛くなるし、衣服や手はシーラントでベトベト汚れる。今からでも工務店さんにお願いしようかと思ったが、1月4日(金)はまだ仕事始め前だし、忙しい工務店さんが天気のいい日を選んで作業をしに来てくれるかもわからないので、昼食後気分を取り直して再挑戦した。慣れてくると作業が早まり改善点も見えてくるので、初日終了までに半分強の5枚が大体できたのはよかった。こういう作業が得意な人は自分でやればよいが、苦手な人は工賃を払ってでも職人さんにお願いした方がよいかもしれない。私は大変だったが、何とかやり終えた満足感があった。しかし、これを設置してよかった、と思う日は来ないでほしい。

 床下浸水くらいの対策をしても5m、10mの水が来たらどうしようもないじゃないか、と思われるかもしれないが、床下浸水の対策が取れない人には、5m、10mの水への対策は取れないと思う。

(注)使用した製品はメーカーに確認したところ、まだ設置件数も多くなく、設置後に豪雨被害に見舞われていない。つまりこれによって床下浸水が防止できたという実績はない。よって、本ページに紹介した工事を行う場合は自己責任でお願いしたい。

 また、実績が出るのを待ってから設置しようという考え方はあろうかと思うが、かつてないような激甚災害が増える昨今、大雨被害は実績を待ってくれないのではないだろうか。

(2020/1/9)