中国渡航記

上海の中国語学習環境

上海の中国語学習環境

 中国語のテキスト

 私は昨年6月に上海に転勤して来たが、職場の人たちはみな日本語が堪能だ。日本語能力が採用条件になっているので当然ではあるが。また、職場だけでなく、上海は日本人が多いため日本料理屋に行けばそこで働く人たちも日本語ができることが多い。

 つまり上海の日本語環境は非常に充実しており、言い方を変えると上海の中国語学習環境はよくない、ということになる。多くの日本人があまり中国語を話せるようにならないのは、中国語が話せなくても済んでしまう、この辺りに原因があるのではないだろうか。

 因みに以前にいた深センでは、香港人も職場にいたことにより、日本語、中国語、広東語、英語のマルチ言語な感じがあり、いまは何語で話すのがよいかと考える余地があったのが、上海は考える余地なく日本語環境である。

中国語を話さなくなってしまった私

 上海に来てからもできるだけ中国語で話すように努力してきたが、ふだん仕事上で発生する問題は複雑で、私の中国語能力は不十分なため、言われたことが聞き取れずに聞き返すと、そこから先は中国語になってしまう。また、言いたい中国語の言葉が思いつかないと、いちいち辞書を引くわけにも行かず、自分の方から日本語になってしまう。こういうことが何度か続くと、なし崩し的に中国語を話さなくなって来てしまう。

 中国語を一番たくさん話すのは、1週間に一度、米国人と結婚して米国に移住した先生から、インターネット電話(Skype)を通じて中国語のレッスンを受けるとき、という本末転倒のような状態になっていたのである。

 いったん中国語を話さなくなると、中国語を話すのが面倒くさくなり、また話すのが恥ずかしく感じられてしまうのだ。例えば昼食時に、日本語なら特に意味もないことをぼそぼそとしゃべったりするが、それは敢えて中国語で言うほどのことでもないので、無口になるよりはそのまま日本語で話してしまったりするわけだ。

中国語しか話さない宣言

 このような状況が中国語上達のためによくないのはわかっているので、昨年終わり頃には新年(1月1日)が始まったら中国語を話そうと考えたが、年明けというのは何かと忙しいもので、スタートからもたもた中国語でやっているわけにもいかず、そうすることはできなかった。
 
 では、2月の春節(旧正月)休みが明けたらと思ったが、春節明けもやはり忙しくだめ。そして、3月31日の歓送迎会時に、新しく日本から赴任して来た人が「中国語をできるようになりたいです」と言っていたので、私は彼に「ここは日本語環境が素晴らしいので、よほど中国語学習への強い意志を持ちづづけないと中国語はできるようにならないよ」と伝えたものである。
 
 しかし、彼にそう言ったあと、そういうことを人に言ってる場合ではなく、自分こそ中国語を話す強い意志を改めて持ち直さなければならないということに気が付いたのであった。気が付いたら善は急げ、折しも明日は年度替わりの4月1日、ちょうどキリもよい。

 そこで歓送迎会終了間際に、私は自分のグループのZさんとYさんに、明日からは日本語を話さない、中国語だけを話すと酒の力も借りて宣言した。

 翌4月1日、部内のある会議の席では、業務報告のついでに日本人がいないところでは中国語しか話さないと宣言した。

 さらに1週間後の4月7日は、昼礼時に順番に何かの話題を話すことになっているスピーチの順番が廻ってきたので、私が以前中国語の勉強を本格的に始めたときの動機とともに、私と話すときは中国語で話してくれるようにとお願いをした。またそのときは外出や出張で居ない人も多かったためメールでスピーチの内容を全員に送り、私の意志を皆に知ってもらった。

宣言の効果は?

 これまで日本語が話せる人の前で敢えて中国語で話すのが気恥ずかしいところがあったのが、宣言してしまったので気恥ずかしさがなくなった。

 それにふだん一番よく話をするZさんが、それ以来、すべて中国語で相手をしてくれるので中国語を話す機会が飛躍的に増大した。私向けにわかりやすくゆっくりと話してくれるのが助かる。

 日系企業なので、資料は日本語独特の言い回しを使っていることもあるので、そういう単語だけは日本語にしてくれたりとか、聞き取れない言葉だけは日本語を挟んでくれる。これまで中国語は日本語からできない人から習わないと上達しない、という信念でやってきてそれは間違っていないと思うが、日本語ができる中国人が基本は中国語で、どうしてもわからないところだけ日本語で話してくれるのは学習効果大である。

 有言実行は成功への道!

(2016/4/23)

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