製作記事

レコードプレーヤー修理

レコードプレーヤー修理

 10年以上前に購入したアナログレコードプレーヤが故障した。DENON DP-200USBという廉価でコンパクト、かつUSBメモリーにデジタルのコピーが取れる機種だ。因みにこの製品はいまでも販売されているので、デジタルコピーが取れるという特徴もあり持っている人も多いのではないか。

 実は、同時に5年前に購入したKENWOODのオーディオコンポXK-330が故障し、しかもこれは今年の4月に修理に出し、2万円近くかけて電源ユニットとメカユニットを交換したものであるのに、サービスに問い合わせると同一箇所が3か月以内に故障した場合に限り無償修理を行うということだった。それで、あきらめて別の製品を購入したので、両方買い換えるのは負担になるということもありプレーヤの方は、修理にチャレンジしたものである。

 

症状

 スタートボタンを押すと、ターンテーブルが一瞬ふっと回ってすぐ止まる。

よくある故障原因

 レコードプレーヤの故障について調べると、真っ先に出てくるのがベルトドライブ方式のレコードプレーヤの場合、ゴムベルトの延びや切断である。本機もベルトドライブなので、これだ!と思ってターンテーブルを外してみたが、切れたり、溶解したりしてはいない。

原因究明

 ベルト交換だけで簡単に直るかと思ったらそういうものではなかったので、場所を変えて本格的に原因究明にかかる。わかりやすいように順に写真を掲載する。

 ターンテーブルシートを外す。

 ドライブ用モーターのシャフトにゴムベルトがかかっているのが見える。

 ターンテーブルを取り外したところ。

 ターンテーブルを取り外すときにターンテーブルから外れたゴムベルトが見える。

 

 ターンテーブルを元に戻して、ゴムベルトもかけて、改めて故障状況を確認する。

(注. もし以下の動画で三角印(▶)のプレーボタンが表示されず、黒画面になった場合は、「ファイルをダウンロード」と記された部分をクリックまたはタッチすると動画が表示されます。)

 なぜか動いた。しかし、カチャカチャ異音がする。どこかの接触不良か、はたまたメカ的な部品が外れているのか?

 裏蓋を開ける。

 STARTボタン、STOPボタンを押してみる。

 カム部の拡大。

 カムを手で引っかけてから、STARTボタンを押して、カム外し動作を確認。

 STARTボタン、STOPボタンから伸びている針金状の線がいかにも頼りなくクリーム色の樹脂部品に当たるだけなので、もしやクリーム色樹脂の向こう側に引っかけてあったのが外れたのではないかと考えて、向こう側に引っかけてみたりしたが、どうもよくわからない。 

 カムが外れたときに押されるリーフスイッチの接触が悪いのか?接点クリーナーがないので、TOMIXのレールクリーナーできれいにする。

 ターンテーブルは軸に挿してあるだけなので、これは輪ゴムで仮止めしても、フルオートリターンのピックアップは水平な場所でないと動作できないので、裏が観察できるように、写真のように裏蓋を取った状態で仮柱を立てて支える。

 裏面も見える。

 電源OFF状態で、ターンテーブルを手回しして動作を見る。

 手回しで、ピックアップはターンテーブル上に移動し、ターンテーブル上に降り、また、元も位置に戻ることができる。ということは、モーターさえまともに回れば、動作するということで、モーター以外のメカニズムは正常に動いていると考えられる。

 メカは正常ということで、電源ONして再び動作確認。

 ちょっとだけ回ってすぐ止まる。

 次に、ターンテーブルを外して、メカの動きを観察する。ターンテーブルの軸を手で回す。

(動画のサイズは20MB以下でないとアップロードできない設定なので1.5倍速にして時間を短くしている。)

 ピックアップ上げ下げの仕組みの一端がわかった。

 ターンテーブルを載せて電源ONして再度動作を見る。

 何回転かしてから止まる。モータードライバーの異常か?

 電源の異常も考えられるので、モータ側の異常か電源側の異常かを切り分けるために、電源(基板)からモーターに行っているケーブルを抜いて、電源単体での出力電圧を調べる。

 12Vあるはずだが、アナログテスターで10.8Vくらいしかない。しばらくすると10.2Vくらいまで落ちてきた。12Vのところが10.8Vしかないのでまず電源基板上の12V三端子レギュレーターICの不良を疑ったが、三端子レギュレータの前後に入っている電解コンデンサの不良も考えられる。オシロスコープを運ぶのは面倒だったので波形は見なかった。見ていれば、入力側の電解コンデンサの容量が抜けていて、整流後の脈流がきれいな直流になっていなかったというようなことがわかったかもしれないが。

 次にモーターに行くケーブルを挿し直して、モータ側で電圧を測定。

 約11V。長いので下の動画につづく。

 電源の不良の他、モーター側に搭載されているモータードライバーICのμPC1470の不良も考えられる。電圧は徐々に低下し、7V近くまで落ち、カチャカチャ異音がしてきた。モーターが脱調?しているのか。(ステッピングモーターではないのでサーボモーターは脱調とは言わない?)

 さらにつづく。

 7Vを下回って、打ち切り。

修理

 東京に出る用事があったので、帰りに秋葉原によって交換用の部品を買って来た。秋葉原もきれいになってしまったものだ。実際に買いに行ったのは、駅の反対側のラジオ会館5階にある若松通商。μPC1470で検索したら若松通商が出てきたので、ここに行った。

 買った部品はこの6点。本命は12V電源まわりの三端子レギュレータの7812、電解コンデンサ25V,1000μFと16V,100μF。サーボモーターコントローラーのμPC1470Hは、12V電源まわりを交換しても直らなかった場合の次の一手。5V電源まわりの7805と16V,2200μFと16V,470μFは、モーターが動くようになったのに他が駄目な場合のバックアップ。因みに470μFは16Vではなく10Vが正しいが間違えてしまった。

 電源基板を取り外すそうと思ったら、黒色のアース線2本がべっとりと固定されて外せなくなっているので、このまま作業。

 三端子レギュレータを取り外すと、放熱をよくするためのシリコンが塗られた跡が。触ると乾いておらず、指についたので、指についた分だけ量が減ったがそのまま使うことに。この三端子はモールドパッケージなのでマイラーフィルムなどは挟まっていなかった。

 三端子の前後に入っている電解コンデンサも外して、三端子とともに新しいものに交換。

 電源の出力端で電圧を測定する。

 11Vと言っているが、テスターの目盛りはよく見ると11.5Vくらいあるように見える。

 三端子の足で測っても、同じ電圧(11.5Vくらい)。三端子の足からコネクタまでは何もないので当然だが。

 デジタルマルチメーターで測ったところ、11.86Vあった。12Vに対して約1.2%少ないだけなのでOK。(規格はメーカーによって異なるかもしれないが、概ね±5%以内。)

 ターンテーブルを載せての動作テストもOK。このあと、回転数を33回転から45回転に切り替えてもOK。

最終動作確認

 いよいよ、レコードをかけて音が出るか?

 音が出た!大成功!! 

 USBメモリーを挿して、デジタル化録音ができるかも確認。

 赤いLEDが点滅している。その後PCに取り込んで録音されていることも確認OK。よって、5V電源は問題なかったことになる。5Vの電圧くらい測っておけばわかったことではあるが。

注記

 20年以上前に購入したものなので、修理してもらえないだろうと思って自分でやったが、まだ販売しているので有償修理はしてもらえたのかもしれない。しかし、自分でチャレンジしたことにより、レコードプレーヤーの精巧なメカニズムに感動した。

訂正(2023/11/20):20年以上前に購入したと思い込んでいたが、実際には13年前の2010年に購入していた。また、デノンコンシューマーマーケティングに修理をしてもらえるのか問い合わせたら、有償修理してくれるとのことだった。因みに本機種は、現在なお継続生産中とのことだった。本記事冒頭の「25年以上前」は「10年以上前」に訂正済み。

 どこがどう動いてどうなるということを解明したわけではないが、モーターさえ回ればあとは歯車やカムの動きだけで、ピックアップを上げて、所定の位置に移動し、ピックアップをレコード盤上に降ろし、またピックアップを上げて元のポジションに戻すということをやってのけるとは、昔の人は大したものである。マイコンなどなくてもこれができていたのだ。

 もしこの記事を参考にして修理しようという人は、自己責任でお願いしたい。感電の危険もあるし、修理の仕方がまずくて発煙・発火しても私は責任を負えないので。このページを読むくらいの人には蛇足ではあるが、一応、念のため。

 因みにサービスマニュアルはネット上で探すと以下のURLにあったので回路図や部品表を参照した。

 https://www.manualslib.com/manual/796196/Denon-Dp-200usb.html

追記(2023/11/24):YouTubeチャンネル 「おじさん工房」にも掲載した。URLは以下のとおり。

 https://www.youtube.com/watch?v=SqXhAhEawbM&t=110s

 

以上

(2023/11/18)