PC内蔵カメラ外付け拡大レンズ
大画面(23インチ)のデスクトップPC(NEC LAVIE PC-A2377CAW)に買い換えたら、SkypeでのWEB会議の際に自分の顔が、以前のノートPCのときに比べて小さくしか映らないことに気が付いた。以前は14インチ画面のノートPCなので、私の場合、顔からカメラまでの距離は60cm~65cmくらいだが、23インチ画面の場合は、75cmくらいに離れるので小さく映るのだ。離れて座ることを考慮して大きく映るような設計にはなっていないようだ。カメラの前にルーペをかざすと顔が大きく映るようになるので、もっとスマートに、Skypeの設定やPCのデバイス設定でカメラ撮影の倍率をソフト的または電気的に設定することができないか調べたが、倍率は固定だった。そこで、光学的な手段、すなわちPC内蔵カメラの前に外付けレンズを設置することにより撮影画像の拡大を行った。
現状画像
液晶ディスプレイの上にポップアップしている白い部分の中央にある黒い円がPC内蔵カメラ、その両側にある小さな4つの穴はマイクである。Skypeの設定-音声/ビデオで自画像を表示させている。Skypeの合成背景を使用し、顔はモザイクをかけている。
ルーペかざし画像
ルーペ(直径70mm)をPC内蔵カメラの前にかざすと、ひとまわり顔が大きく映る。ルーペを手に持ってカメラにかざしているため、身体全体がPCに近づき、かなり大きく映っている。
レンズ選定
このように大きなルーペでは取り付けが大変なので、小さいレンズを探した。カメラ左右に40mmピッチで設置されているマイク穴を隠さないように直径35mm以下のものだ。
100円ショップ
必要なサイズよりやや大きいが、私が60年前に小学校で使った、緑色や赤色のプラスチック製枠の直径4~5cmくらいの小さなルーペを近所のダイソーで探したが見つからず。
ネットショップ
上述のようなレンズは50個セットとかでは見つかったが多過ぎ。探すうちに面白いサイトを発見した。
東京セイル株式会社 https://www.tokyo-sail.co.jp/ ルーペ、レンズのメーカーだ。ルーペ、単体のレンズ、業務用の各種レンズ応用製品、そしてレンズ付つめきり、レンズ付とげぬき、レンズ付みみかきといったアイディア商品のようなものまであって、見ているだけで楽しい。
「素材レンズ アクリル」というジャンルの中から「角32×26mm約2.5倍アクリルレンズ」と「角35×22mm約3倍アクリルレンズ」を購入候補にピックアップした。しかし、これだけ色々のアイディア商品が掲載されているので、もしや載っていないがある、ということがないかと思い、用途を書いてメールで問い合わせてみた。
回答は、ないということだったのだが、その代わりに100円ショップなどで売っている簡易式VRゴーグルを分解してそのレンズを使うとよいのではないかというサジェスチョンをいただいた。早速ネット検索すると、100円ショップのセリアのものの試用記事が見つかったので買いに行った。
VRゴーグル用レンズ
セリアのVRゴーグルは上写真のものだが売っておらず、お店の人に尋ねたら、すでに発注停止になっていた。因みに東京セイルさんが言っておられたのはキャンドゥのもので下写真のものだったそうだ。
100円ルーペ
ともあれ、ないものは仕方ないので、セリアで小さめのルーペ2本セットのものを買って帰った。ひとつは直径60mmで倍率約2倍、もうひとつは直径45mmで倍率約3倍。材質はポリスチレン/ABS。
試してみると、使い物にならず。透明度が低い?というのか、ピントがあうところでも、なんとなくぼんやりする。レンズの表面をきれいに拭いても、レンズ表面の汚れが見える感じ、あるいはまわりの光が映りこんでしまう。このような目的外使用ではなく、ルーペとして使ってみたところ、文字が波打つように歪んで見えてまともに使えない。よく見るとレンズが同心円状に波打って成形されており、100円ではこんなものかと。おそらく100円VRゴーグルのレンズも似たようなものだろう。
手持ちのガラスレンズ直径70mmのルーペの映りが一番よいが、これでもレンズ表面の汚れやほこりにもPCのカメラのピントが合ってしまってよく映るのでだめ。PC内蔵カメラのレンズをかえなければダメそうなので、これまでといったん断念。
新しい展開
東京セイルさんには、せっかくサジェスチョンをいただいたので、上述の経緯をメールしたところ、余計な手間と出費をさせてしまったので、代わりにサービスでレンズをお送りしますという、新しい展開になった。いいレンズを使って鏡筒をきちんと作ればレンズ表面の汚れやほこりの映り込みは回避できるかもしれないと考えなおし、お申し出を受けることにした。なんと、3枚もいただいてしまった(以下写真)。
・直径38mm アクリルレンズ 倍率:約3.5倍、 焦点距離:約100mm
・直径42mm アクリルレンズ(片凸) 倍率:約2.5倍、 焦点距離:約167mm
・直径130mmアクリルレンズのカマボコ型の切れはし(片凸) 倍率:約1.6倍、 焦点距離:約416mm
実験
倍率、焦点距離の数字をいただいているが、PC内蔵カメラのレンズのデータはなく、カメラレンズとこのレンズを組み合わせたときにどうなるということは高校物理で習った光学の知識では、おそらくそれを覚えていたとしてもわからないので、現物で実験を行うことにする。
まず、130mmレンズの切れはしが立ちやすいのでカメラの前に立ててみたが、ほとんど拡大されず。レンズから離してもあまり変わらず。これは焦点距離が長いためであろう。それで、38mmか42mmのいずれかを使うことにする。
実験の前に、製作時に使用する鏡筒を確認しておく。ダイソーで買ってきた100円のごますり器とロートである。レンズをはめ込むのにどちらが適切かわからないので2種類買ってきた。
使う部分だけを取り出した。
ごますり器をためしにカメラの前に置くとこうなる。自在アームのLEDスタンドのランプシェードをカメラの前に水平に配置し、その上にカッティングボードを載せ、その上にごますり器を載せている。カメラ画像の円形になっているところは、ごますり器の容器のふちで、その円の内側に外界の景色が映っている。円の外側はごますり器のプラスチックの壁面である。つまりこれだけ長い鏡筒だと鏡筒の壁面が画像内に映りこんでしまう。
それでこのカメラはどれくらいの視野角があるのかを調べることにする。
分度器を置くと、縁の部分が邪魔なので、分度器をコピーして縁の部分プラス、カメラ部の樹脂の厚さくらいをコピーから切り取って、ポイントカードを立てて撮影画像にぎりぎり映りこまないのは何度か調べる。下の写真では、カメラに直角な方向から30度に立ててあり、画像上はかなりカードが映りこんでいる。調べた結果、±40度くらいの視野角があることがわかった。
数値で±40度と言ってもあまり意味なく、結局は現物合わせで作るので、その角度を紙の上に写し取った。
下の写真は、38mmレンズを仮装着したもので、容器の底の部分は適切な倍率が得られる長さで切断するが、レンズから容器がどれくらい前方に出たところで切れば容器が映りこまないかが視野角±40度の線によってだいたいわかる。
38mmレンズをカメラからどれくらい離すかの実験
42mmレンズをカメラからどれくらい離しておくかの実験。
設置のしやすさと拡大率の適切なところとの兼ね合いで、両方のレンズともにカメラから12~13mm離したところがよかった。画像で見ると38mmの方が大きく映るのでこちらで製作することに決定。
製作
ごますり容器をカットするところをテープでマーキングする。テーパーになっているのでまっすぐに巻きにくい。なお、ロートの方はPCへの設置がむずかしいので使わなかった。
マイクの穴に半分被っているので、逃げのU字型切り込みを2か所に設けた。
これで試しに設置すると、画面の左下と右下に鏡筒先端が映りこむ。カメラがわずかに下向きに取り付けられていて、下側だけが映りこむようだ。そこで鏡筒の前方をもう5mmほどカット後、黒色艶消し塗装を行った。外光の侵入や、レンズ表面のほこりの映り込みをできる限り防止するためだ。F35Bのプラモデルを作ったときのプラモデル用塗料Mr.COLORのタイヤブラック(つや消し)を使ったが、これは真っ黒ではなく、ダークグレーだった。それでも役目は果たしていると思われる。裏面についている白い板は、カメラの前に置いたときの鏡筒の転がり防止と背面からの光の侵入防止用である。アクリル板にやはり同様のホワイトを塗ったもので刷毛目がいまいちではある。レンズは4か所をプラモデル用セメダインで鏡筒に接着した。
結果
設置状態。ディスプレイは若干後ろに傾いているので、鏡筒は後ろにもたれかかった形になり、大地震でも来ない限り落ちる心配はない。
設置前の画像。
設置後の画像。
設置前に比べ、顔の大きさ(縦横の長さ)が約20%大きくなっており、初期の目的が達成できた。心配していたレンズ表面のほこりの映り込みなどは、きちんと鏡筒を作ったら発生しなかった。
上写真のようにSkypeの合成背景だとわからないのだが、実背景にすると下写真のように画面右下と左下のひずみがでていることに気が付いた。画面左上と右上がひずんでいないのは、カメラの中心軸が斜め下方にむいていて、上の方はレンズのひずみが少ない中央に近い部分を光が通過するためではないだろうか。鏡筒を前に傾けてみてもひずみの状態は変化はするが、解消はされなかった。顔を大きく映すのが目的なので、周辺部のひずみには目をつぶろう。また、このレンズを設置することにより、焦点深度が浅くなり、顔にはピントが合うが、遠くのものはポートレート写真のようにボケが出るようになった。これも顔がメインということで、全体をはっきり見せたいときにはレンズを外せばよい。
謝辞
レンズを無償でご提供くださり、アドバイスまでしてくださった東京セイルさんにお礼申し上げます。
以上
(2022/5/26)