中国渡航記

エアコンが壊れた

エアコンが壊れた

壊れたエアコン

 

 外出から戻って来てエアコンをかけようとしたら動かない。代わりに扇風機をつけようとしても動かない。他の家電品の電源もすべて入らない。ブレーカーを見ると落ちている。家電品のどれかが壊れている。再投入してエアコンをオンするとすぐ落ちる。エアコンの電源プラグをコンセントから抜くと他の家電品は動くようになった。10月だったのでとりあえずエアコンなしで過ごせるが、エアコンの電源プラグもコンセントも黒く焦げた跡がある。

仲介業者さんと修理屋さんが来る

 借家なのでプラグを抜いた状態で現場保存し、手を触れずに仲介業者さんに連絡、週末に担当者と修理屋さんが来る。
 
 修理屋さんがプラグとコンセントを分解すると、中の電極1箇所の周囲が黒く焼損。最悪は火事の可能性もある状態。

焼損したプラグの内部

 これは、プラグとコンセントを交換すれば、直ります、ということになって、仲介業者さんがプラグとコンセントを買って来るので、また来週来ます、と。エアコン本体が悪い可能性もあるので本来エアコンも同時に調べる必要があるが、まずはそれで試してもらうことにする。

 プラグもコンセントも元の状態にフタをして抜いた状態で放置。
 

大家さんと修理屋さんが来る 

 大家さんとそのお兄さんと前回とは別の修理屋さんが来た。お兄さんは設備関係にうるさい人なので、交換用プラグとコンセントを買って来る仕事は仲介業者さん任せにせず自分で買って来た。

 修理屋さんは、黒く焼損した原因について、コンセント側のAC220Vの線をとめているネジが緩んでいたので、接触抵抗が高くなりそこから発熱した、と理にかなった説明をしてくれたのでそこは同意。 

 でも交換後。エアコンの電源を入れた瞬間にブレーカーが落ちる。修理屋さんは、これはエアコン本体、室内機と室外機のどちらかが壊れていると言う。大家さんは、私が電気の専門家だと知っているので、どう思う?と私に向かって聞く。私も修理屋さんの考えに同意と伝える。

 このエアコンは韓国LGブランドのものだが約10年経っており、運転時に中からカラカラと大きな音がどきどきする、ということを伝えたこともあり、新品に交換すると即決。ケチと言われる上海人とは思えない。

 こちらも換えてくれるなら日本のダイキンブランドのがいいな、とダメ元で言っておいたら、すぐに家電店から電話がかかってきて、ダイキンのは高いから、高い分あなたが負担してくれるならダイキンのにする、と。

 さすがに借主が設備代を負担する道理はないので、ちゃんと冷えて、暖まって、壊れなければ何でもいいです、と。

 それでは2週間以内に購入して土曜日に配達させて、その翌日曜日に設置するということになった。

 ところでこの修理屋さん、壁のコンセントを外すときにブレーカーを落としてからやらないので、危険だから落としてからやりましょう、と声をかけてもそのままでよいといい、結局帰ったあとは、AC220Vの裸の線がむき出しの状態だった。私がそれに触れる心配はないが、子供やペットがいたら感電死しかねない。

むき出しのAC220V電源ケーブル

旧品の回収

 ところが、もうすぐ2週間経とうかという頃に電話があり、その次の週に家電店のセールがあるのでもう1週間待ってくれと。でも土曜日には旧エアコンを回収に行くとのこと。

 その土曜日には、回収業者2人と大家さん、大家さんのお兄さん、その息子の総勢5人が来た。みんな大声で話すのでにぎやかなことこの上ない。こちらも大声になる。

 その玄関マットを貸してくれと声がかかる。室外機はベランダの手すりの外の専用スペースに設置されており、それをベランダ内に入れるときに手すりを傷つける恐れがあるので、手すりに被せるのだそうだ。汚れた手すりに被せて古いエアコンの室外機をその上で引きずり込んだらどろどろに汚れることは火を見るより明らかだ。ふつう養生マットくらい自分で持ってくるだろう、というのは日本の話で、中国ではそういうものはその家から借りるのが当たり前なのだ。

 なんだかんだとやっている間も小学3年生の男の子はちょろちょろするし、なんの勉強が好きだ?と尋ねると体育だと答え、横から太極拳を見せてあげなさいとか言われて、型を見せてくれたり。結局玄関マットは汚れてしまったが、幸い直ちに洗濯してもとに戻った。

新品の配達・設置

配達

新エアコンの梱包箱

 その次の土曜日の午前中に新品を配達ということになったので、午後の予定を組んでいたが、前日になり、何時になるかわからないと連絡あり。家電店と運送屋は別だから、家電店にいくら言ってもどうにもならないのよ、運送屋さんは地方から出てきている人でしょ、日本とは違うのよ、と。

 土曜日はやきもきしながら待っていると、昼前にまた大家さん兄と運送屋が現れ、大きな箱をふたつ置いて行った。大家さん兄は、箱開けるなよ、箱開けてしまって部品が足りないとこちらの責任になってしまうからと言い置いて帰って行った。この辺り、上海人はしっかりしている。もちろん、私も箱を開ける気はさらさらなかったが。

 

設置

 日曜日の朝、大家さんから電話ありこれから行くけど、電器屋さんが来ても先に家に入れないようにと。しばらくして、もう下に来たと言われた直後にマンション入り口から電器屋さんが来たピンポーンが。大家さんと一緒に上がってくると思ったら電器屋さんが先に来て開梱を始め、しばらくして大家さんが。

5人で大騒ぎ状態を撮りたかったが、大家さんたちは写真に写りたくないと視界から出てしまった

 さらに大家さん兄とその息子が来て大騒ぎ。設置スペースが狭く、ブロックのようなものでエアコンの脚を浮かさないとベランダの縁に当たってしまうということで、大家さん兄が石を拾いにゆく。そういうものは予め準備してほしいものだが。しばらくして、割れたコンクリートブロックを2個手に持って戻って来た。私からのどこかから剥がして来たのではという不信の視線を感じ取ったのか、管理人に断ってもらってきた、今から買いに行ったら時間がかかるだろうと。まあ、そういうところは中国は融通無碍だからいいけど。

設置された新しいエアコン

 2時間弱で作業が終わり電器屋さんが帰ったあとも大家さん兄は配管を固定したいので紐はないかと言い、ないとわかるとどこかからひもを調達してきて、配管を固定、これは外すなよと。さらにベランダに散らかった梱包材や切りかすなどをきれいにホウキで掃き集めて帰って行った。

室外機の配管を固定

新たな問題が

 ようやく皆が去って、エアコンをつけるとこれは快適に動いている。中国で有名な家電メーカー美的(Meida)の製品で、何と冷房能力5,250W,暖房能力5,800Wもある強力なもので、快調に動く。

 ベランダに出てみると、物干しレールが昇降する仕掛けがあるのだが、昇降用の金属ワイヤーが切れている。そして、物干しレールは普段天井から50cmほどのところに下ろしてあったのが、天井まで上げてある。これは電器屋さんが作業に邪魔なので上に上げるときに不注意にやって壊した違いない。

切れた金属ワイヤー 昇降式の物干しレール

 ただちに大家さんに電話して事情を話して見に来てくれと言うと、私もう帰る途中よ、どうするのよ、と。しばらくすると大家さん兄が現れ、誰が壊した、証明できるのかと問う。工事の始終をビデオで撮影しているわけではないので証明はできないものの状況的には間違いないのだが。

 これはどうしようもない、と言う。そう言われても退居のときに壊れた状態でそれを私に弁償させられても困るので言い合いになる。仲介業者に電話してくれというので、電話して事情を話し、大家さん兄と仲介業者さんで話したあと、再び仲介業者と話すと、修理代を半々で負担を提案しているという。電球などの消耗品は借主負担でもこれは設備なのにおかしいだろうと、先ほども大家さん兄と言い合ったことを再び言うが、ラチ開かずとりあえずいくらか聞いてみると200元(約3,800円)負担だという。工賃は大家さん、私は部品代を負担とのこと。

 工賃と部品代では部品代の方が高くて不利なのではないか、見積りが出た時点で折半にするならわかるが。そもそも賃貸契約書にはこのような場合の負担がどうなっているのか調べるべきとは思ったが、中国語で書かれた契約書をその場で引っ張り出して条文を読むのも面倒くさいし時間もかかるし、早くこのことは終わらせたかったので、じゃあ、わかった、200元払うよ、というと、いやあなたはわかっていない、地方から出て来て家電店の下請けで働いている人がこういうことをやるのは私だってどうしようもない、しかも、なぜ私たちが来る前に先に入れたんだ、私は好い人だ、あなたを騙したりはしない、と筆談を交えながらまくし立てる。先に入れるなというのはそういう意味だったのか、と改めて思ったが、大家さんも同時に上がってくると思ったら先に来てしまったのだ。

 結局200元をその場で払って、メモ用紙に受け取り書を書いてもらって、また来週来るということになった。

 因みに会社の人に聞いてみると、その人は部屋を貸しているとのことで大家の立場からするとこの手の金属ワイヤーは消耗品なので借主負担とのことだった。しかし、物干しレールまで含めて丸ごと交換するのでなければもう少し安く済んだのではないだろうか。

物干しレールの交換

 さらに次の土曜日、11時半から12時の間に業者が来るから、私も行くから決して先に入れるなと、電話あり。11時半頃に1階の入り口のインターホンからのブザーが鳴る。白黒の小さな画面でが誰が来ているのかよくわからず、大家さんが来るまでそこで待っててくれ、と言うと、私は大家(の兄)だと言うのでロックを開ける。

 業者はなかなか来ない。大家さん兄は、地方から出てきている人たちは、時間も守らないし素質が低いのでどうしようもない、などと言う。昼飯食べたか聞くとそこで麺を食べてきた、あなたも食べろ、台所に行ってる間に何か物を取ったりはしない、と言うので先ほど作りかけていた、カツサンドを作り、インスタントのポタージュスープをすすりながら、隣に腰を据えた大家さん兄と雑談。BMWの5シリーズに乗ってるとか、日本車は品質はいいが潰れやすいとか言うので、衝突したときに前が潰れやすくしてあるのはドライバーの命を守るためだと反論したり、中国人はしょっちゅう車線変更をするので操縦性が良いのがいいと言うので、日本車だって操縦性は良いと反論したり、いや何も日本車が悪いと言っているのではないとかいい、まあぶつかったときに自分の方がたくさん潰れるのがいやだということのようであった。

 話は電気製品にもおよび、10年前は日本製がナンバーワンだったのに、いまはSONYもSHARPもどうなってしまったんだ?と。この話題は通信・コンピュータ会社に長年勤めてきた私にとっても苦しい話題だが、日本メーカーは開発設計から生産までを全部自前でやることに拘った結果、開発と生産をいち早く分離したアップルや、生産専門でコストを下げて来た台湾企業および台湾資本の中国工場にコスト面で太刀打ちできなくなったことなどを話した。話したからと言ってどうにもならないのだが。
 
 さらに安倍首相は軍事専門チャネル(CCTV-8のこと。中国中央テレビの農業・軍事専門チャネルでは、日本の自衛隊のことを日本国内よりも詳しく報道していたりする)では軍事力(艦船、航空機等)を増強しているという話題に及ぶので、それを言うなら、南シナ海で勝手に人工島を作って自分の海だと言っているのは誰だ、と反論すると、これは国家と国家の話だ、我々とは関係のない話だと、急に話がそらされた。

 そうこうしているうちに約束の時間より1時間は遅れて業者が到着、大家さん兄は、こういう人は素質が低いから、あなたは何も言うな、全部私が見ているからと耳打ちする。上海人は中国で最高とも言い、完全に上から目線である。

 1時間ほどで完成。ワイヤだけ換えるのではなく、レールごとセットで交換していた。部品代は480元のレシートを持っていたので、私の方が負担が多いということはなかった。

交換したワイヤーと操作ハンドル  物干しレールもセットで交換

ベランダ手すりの補修

 これだけでは終わらず、さらにベランダの手すりの継ぎ目が開いているので補修するためのシリコン充填剤のようなものを持ってきていたが、色が合わないとかで、明日9時に来るという。まだあるのか。。かなりうんざり。

 日曜日、大家さん兄は時間通りやってきた。私はこの1ヶ月ほとんど毎週末この件に関わらざるを得ず、外出にも制約を受けて来たし、この日は仕事もあったので会社のPCで仕事をしていた。私は仕事があるのでそこで休んでてくれ、と30分ほど待っててもらった。ほんとに時間とおりに来ないのは私だってどうにもならないんだよ、わかってくれよと。はいはい、私だって仕事でも似たようなことはいくらでもありますよ。

 手すりの補修

 手すりがようやく終わったと思ったら、こんどはベランダの手すりの下の転落防止用の強化ガラス固定用のパッキンを補修するからもう一人別の人が来るとのこと。しばらくして、このマンションのメンテナンス要員の人が来たが、これは補修不要ということで、少しでも傷んだところは補修したいというこだわりのある大家さん兄の要請は却下されたのであった。

 1ヶ月余りに及んだエアコン騒動はここでようやく終わりを告げたのであった。あとは、このエアコンが壊れないことを祈るだけだ。

(2015/11/28)

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