中国渡航記

上海へ引っ越し

上海へ引っ越し

 中国・深センに来てまだ1年2ヶ月なのに上海に転勤になってしまった。ようやく深センでの生活も落ち着いて2年目は色んなところを見たいと思っていたので、面倒な引っ越しなどしたくないというのが正直なところではあるが、新しい場所での生活も悪くないか、と気持ちを切り替えて引っ越しに臨むことにした。

 

引っ越し代

 引っ越し代は会社から最大XXXX元が出るとのことで、日本から深センに来た時と同じ日系の運輸会社に見積りを頼む。会社の上限額の約2.7倍の見積りが出て来た。会社ではXXXX元しか出ないんですけど、と言うと、それは市内引っ越しの料金です。都市間ではこれくらいかかります、とのこと。日系なので多少高めというのはあるだろうが、私の勤めている会社はYYYY有限公司深セン分公司なので、そもそも社員の都市間にまたがる転勤というのは想定されておらずそういう規定がないのだと思われる。

 現地採用とは言っても中国人社員は簡単に転勤させられないが、私の場合は特に縛りもなく転勤させられるのだ。結局これは会社都合での転勤なので引っ越し代は実費を請求できることに。しかし、日本から深センに来た時より、深センから上海への引っ越しの方が高いというのはどういうことだろう。箱の数が日本から来た時の倍くらいに増えてはいるのだが。

家探し

 上海ではどんなところに住むのか。上海への出張時に時間を作って下調べをする。私は外食派ではなく自炊派なので、日本料理屋がなくてもよいのだが、日本食品の売っているスーパーがそばにある必要がある。でも、結局日本料理屋のあるエリアと日本食品の売っているスーパーのあるエリアは同じであり、観光地で有名な外灘のある黄浦江の西側、浦西側のそういう辺りで探す。

 おおざっぱに言って、上海の家賃は深センの1.5倍くらいである。ネットで探すと安い物件もあるのだが、慣れない日本人がそういうところで探すのはどういう落とし穴があるかわからないので、会社に出入りしている不動産仲介業者に紹介してもらうことにする。会社出入りの業者は出向者の住宅、すなわち家賃会社持ちの物件を紹介するのが仕事なので、基本的に高い。それで、4月末に10数件見て回ったときはどれも高過ぎてアウトであった。

 私は現地採用で家賃は給料から自腹で払うのだから出向者向けの高級物件ではなく安いところを紹介して、と条件をはっきりさせて、5月下旬の出張時に再度10件余りを見て回り、ようやくその中の1件に決めることができたのであった。

家探しのひとコマ

 午前中見た中ではここにしようと思い、午後別の仲介業者の物件を見たがやはり午前中のところがよかった。そこで、もう一度問題がないかチェックのために3時過ぎに訪れたのだが、私が見ている間に、大家さんの携帯には何度も電話が入り、そのうち別の不動産会社が今さっき日本から上海虹橋空港に着いたばかり別のお客を連れてきたり、またさらに別の業者が別の日本人を連れてきたりで忙しい。

 値下げ交渉をしようと思っていたのに売り手市場で、他の業者の家賃は私の業者の家賃より500元高かったので、元の家賃のままで決めるしかなかった。やらせではないかと思うようなタイミングで次々とお客が来ていたのであった。

予約金の支払い

 決めたときから、実際の上海に転勤してくる入居日までは3週間ほどあり、その間家賃が入らないということを大家さんは渋っていたのだが、がまんしてもらうこととした。実際、気に入った物件を見つけても1ヶ月も前から押えておくには結局家賃をその場で払い始めるしかないため、3週間前から入居日まで家賃を払わずにキープできたのはよかった方かもしれない。

 しかし、予約金(家賃1ヶ月分)を今払ってくれなければ、このあとに見に来た人に変えるかもしれないと言われ、大家さん、仲介業者、私の3人で近くの銀行までお金を下ろしに行く。結構な枚数のお札になるので、数回に分けておろし、お札の枚数数え機で確認して支払う。こういうことなら仲介業者も領収書くらい予め用意してくればよいのにそういうものもなく、何かの裏紙に仲介業者が口述する文言を大家さんが手書きしようとするので、せめて用紙だけでも新しいものをと、たまたま持っていたA4の白紙を渡して、それに書いてもらった。

 何月何日までに押金(敷金のようなもの)2ヶ月分を支払わないとこの予約金は没収となる、というようなことが書かれており、大家さんのサインがある。

申し込み成立

 正式の契約書はその次の週に仲介業者が送ってくれることになったが、まずは申し込み成立で銀行の札数え機の前で私と大家さん(女性)で記念写真を撮る。悪者ならそういう写真は撮られたくないだろうが、大家さんもほっとして写真に写ってくれたので一安心。

契約書のチェック

 間もなく、仲介業者からメールで契約書が送られてきたのでチェックする。当然中国語。こういう硬い文書もだいたい読めるようになっていたので、チェックし、気になるところは指摘し、さらに上海の会社の人事の人にチェックを頼んだところ、これは上海市の不動産契約書の標準書式で問題ありませんとのことだった。しかし、私が指摘した点は、却って変な修正が加えられており、再度指摘して結局ほぼ元の状態でOKとなり、押金2ヶ月を振り込んだ。

セキュリティシステム

 深センのときは29階だったが、今度は2階である。しかも建物入口のひさしの上の部屋なので泥棒が入りやすそうな場所である。大家さんはここは守衛所からよく見えるところなので安心だというが、それでもセキュリティシステムがついている。外に面した2部屋にセンサーがある。これで賊が侵入したときにはセキュリティ会社に自動通報するシステムだ。

 予約金も払い終わった後で気になったのだが、あれはただのセンサーなのか?もしかして監視カメラで当局がハニートラップとして送り込んだ女スパイと一緒にいるところを録画し、それをネタに機密情報の提供を求められるというようなことにならないのか。なにせ魔都上海である。

侵入センサー

 少し前に上海の日本総領事館の職員がそのような目にあって自殺に追い込まれたということもあるし、などと考え、やはりあれは取り外してもらおう、と仲介業者から申し入れたが、結局うやむやになり、入居時によく見ると不透明な樹脂でできており、近寄ると赤いランプが光るだけなので、恐らく単純な赤外線センサーだろうということでよいことにした。入居前に取扱い説明書を用意しておいて、と頼んでおいたのだが、説明書はないと言われ、この街区(というかどこかの業者が開発したひとまとまりの団地)のメンテナンス業者のような人に聞いてきた手書きのメモにしたがって操作してみるが、思ったように動かない。結局まだ動かずじまいだが、近づくと赤いランプは点灯する。

扇風機のしまい方

 扇風機は組み立て式になっている。これは日本でも中国でも同じだ。
日本の場合、夏が終わって扇風機をしまうときに、どのように梱包箱に再収用するかが、梱包箱や取説に印刷されている。ところが中国で買ったものはそのような表示はない。分解して、何枚かあるポリ袋を被せて適当に収納する。

 日本製のように各部分の形に合わせてくりぬかれた発泡スチロールや、精巧に切り抜いて組み立てられた段ボールといったものはなく、大雑把は間仕切りが1枚あるだけで、外部から力が加われば、それがそのまま内部に伝わって中身が壊れそうな梱包箱だが、やむを得まい。

荷造り

 段ボール箱に封をするガムテープ、最後のひと箱はどうする?ハンドキャリーするスーツケースは既に満杯状態で半分以上残っているガムテープが入る余地はない。かといって段ボール箱に入れてしまうと、ガムテープが使えない。どうする?答えは簡単、使う長さだけ予め切っておいて、ガムテープを箱に入れてから封をする。

 引っ越し屋さんは、日本語のできる若い女性と男性3人で約束の時間にやってきた。20箱自分でまとめ、あとは、箱に入らない応接テーブル、簡易椅子など。応接テーブルはガラス製の天板から脚を外し、緩衝材(プチプチ)にくるみ、段ボールで大きさに合わせた箱を作っている。メジャーを持ち出して大きさをきちんと測ってやっているので、単なる合わせ仕事じゃないんだ、と感心して見ていたが、いったん作ったものを2回くらいはばらして、大きさを変えて作り直していた。これが最大の仕事で1時間くらいかかった。

 搬出証明証という書類をマンションの管理事務所に提出し、無事搬出完了。これは、大家さんのものを無断で持ち出したりしないよう箱の数などを記載した紙に大家さんから承認をもらった不動産仲介業者(深センの)のサインがあるものだ。 

荷物搬出トラック

ハンドキャリー用スーツケース

 飛行機での移動時にはスーツケースの重さが問題となる。通常、国際線預け荷物は23Kgまでのものが1個。航空会社により2個までOK。中国国内線の預け荷物は20KgまでOKで、超過分は超過重量によって追加料金が取られる。今回の場合、超過重量1Kg当たり、深セン→上海の標準運賃1,400元(安売りになる前の定価のようなもの)の1.5%がかかるということがわかった。

 当初、スーツケース2個は重いので、2個とも預けようと思っていたが、小さい方は機内持ち込みサイズいっぱいのものなので預けないこととし、結局超過5Kg、105元ほどで済んだ。

移動前後の段取り

 日本国内の引っ越しは、荷物を搬出した当日か翌日に引っ越し先に荷物が着く、というのがこれまでの私の経験だったが、中国国内では、距離があるため、深センから上海までは約2,000Kmで6日後に着くという。その間ホテル宿泊は不経済なので、次のような計画を立てた。

 荷物搬出、その晩はそのまま深センの家で寝る。シーツとうす掛けはハンドキャリーする。枕はかさばるので予め出張のときにタオルケットとともに上海にハンドキャリーしておく。その晩の枕は元から部屋にあったクッションを使用。翌日大家さんに明け渡し。その後上海に飛び、ホテルに1泊。翌々日上海の新居に入居。

 この計画通り実行したが、やや誤算だったのは、上海は深センに比べて気温が低い。深センは6月に引っ越し時に既に日中30℃を越えるような、ほとんど就寝時にうす掛けも要らないような気候だったが、上海の6月は梅雨時の日本(東京近辺)とほぼ同じ梅雨の気候で、夜中に目覚めると寒い。そんなこともあろうかと、1着だけスーツケースに入れておいた毛のセーターを着て寝なおしたのである。

 引っ越し荷物は予定通りの日に、前日に連絡があったとおり夕方4時にほぼ時間通りに来た。作業員数名の他に、日本語のできる若い女性が来た。名刺をもらって、あ、日本人だ、と。日本語が上手な中国人は多いので、この人もだいぶ背が高いので東北出身の人かな、と思っていて失礼をしてしまった。でも、よくそう言われますとか、逆にフォローされてしまった。ごめんなさい。

新居の様子

 ということで無事引っ越し終了。引っ越し後のことについては今後追ってご報告を。

(2015/6/30)

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